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AIの利用規約が11月12日に変わる ― 業務にAIを組み込む会社が確認する3つの要件

Claudeを提供するAnthropicから、利用規約(Usage Policy)を2026年11月12日に改定するという通知が届いた。改定の内容は10月8日に公開されている。報道では「モデルへの虐待行為の禁止」が見出しになっているが、業務にAIを組み込む会社にとって重要なのは別の部分だ。

当社は、自社のプロジェクト管理ツール「projectAI」で45のAI機能を本番運用し、お客様の業務システムにもAIを組み込んでいる。その立場で改定を読むと、設計の段階で確認しておくべき要件が3つある。高リスク用途での人による確認と開示、物理的に動く機器につなぐときの停止手段、そして対応地域の判定が所在地だけでなく支配関係まで及ぶ点だ。

この記事では、改定の全体像を短くまとめたうえで、この3つの要件を当社の実装方針と合わせて説明する。Anthropic自身が「多くは既存の運用を明文化したもの」と書いているとおり、設計が規約の形に合っていれば、改定後に変えるものはない。

11月12日からのAI利用規約で確認する3つ ― 人が確認して決める、人が止められる、対応地域

改定の全体像

公開された告知によると、変更は7点ある。

  • 偽装活動の条項を新設。偽アカウントによる拡散や発信元を隠した情報発信など、複数の条項に散らばっていた禁止事項を一つにまとめた。
  • 選挙の条項を絞り込み。有権者を欺く行為と選挙妨害に焦点を移し、選挙キャンペーンの個別ターゲティングの一律禁止は撤廃した。
  • 兵器の条項を明確化。兵器を動かすソフトウェアや、ドローンの武装化を明示した。
  • 監視・法執行の条項を書き直し。同意のない追跡と、誰を捜査・逮捕・起訴するかの判断への利用を禁止。不正検知や報道、法務調査は許可と明記した。
  • 高リスク用途の要件を明確化。対象となる推奨の範囲を明記し、物理的に動く機器への要件を加えた。
  • モデルへの虐待行為を禁止。目的のない執拗な残酷行為が対象で、通常の不満やモデルのテストは対象外。
  • 対応地域ポリシーの明確化。支配関係にもとづく判定を明記した。

このうち業務システムに直接関わるのは、高リスク用途と物理機器、対応地域の3つだ。

要件1 高リスク用途では、人が確認し、本人に開示する

規約は、法律、医療、金融、与信、保険、住宅、雇用、教育など、人の健康や法的権利、生計、生活に必要なサービスに関わる判断にAIを使う場合、二つのことを求めている。有資格者が推奨内容を確認して変更できること、そして影響を受ける本人にAIを使ったことを伝えることだ。この要件自体は以前からあり、今回は対象となる推奨の範囲が明記された。

当社の実装は、この要件を前提に組んでいる。projectAIの45機能は、AIが「下書き・整理・翻訳・検索・反映」を担い、方針を「決める」のは人という役割分担で動く。仕様の承認、変更の取り込み、本番への反映といった影響の大きい段階では、必ず担当者の承認を待つ。

教育の例として、進学支援サービス「年内入試ナビ」の志望理由書と小論文のAI採点がある。AIは観点別の点数と講評を返すが、本文は書き換えず、合計点はAIに任せずプログラムで計算し直している。受験生に影響する判断をAIの出力だけで確定させない設計だ。

本人への開示は、消費者向けのチャットでも求められる。当社が家具の自社ECサイトに組み込んだAIチャットは、購入前の質問にAIが答え、解決しない場合は問い合わせフォームや電話に引き継ぐ。AIが答えていることを隠さず、人につながる経路を用意しておくのが基本になる。

要件2 物理的に動く機器につなぐなら、人が止められる

今回新たに加わったのが、車両、機械、医療機器など、自律的に物理的な動作を行い、人に危害が及びうる機器にClaudeをつなぐ場合の要件だ。有資格の操作者が機器を観察して停止できること、Claudeとの接続が切れても機器が安全な状態を保てること、の二つが求められる。

建設や製造の基幹システムにAIエージェントをつなぐ案件では、この要件が設計の前提になる。当社が建設会社と開発した受発注システムと基幹システムでは、AIアシスタントや現場写真の自動仕分けを組み込んでいるが、どの機能も「AIが使えないときは通常の処理に切り替わり、業務が止まらない」ように作っている。機器を動かす場合は、この考え方をさらに進めて、AIが止まったときに機器がどの状態で止まるかを先に決める。

当社の進め方では、AIに任せる場面を決める最初の段階で、「人が止める手段」と「止まったときの状態」を仕様に書く。あとから足すより、最初に決めるほうが安い。

要件3 対応地域は、所在地だけでなく支配関係で決まる

対応地域ポリシー(Supported Regions Policy)は、Claudeを利用できる国と地域を定めている。日本は対応地域に含まれる。今回明確になったのは、判定が利用者の所在地だけでなく、法人の支配関係にも及ぶ点だ。非対応地域で設立された法人や本社を置く法人に加えて、非対応地域の個人や法人に過半数を所有または支配される法人は、その従業員が日本にいても利用できない。

海外に親会社を持つ日本法人は、親会社の所在地を確認しておく必要がある。該当する場合、Claudeを使う機能は、他の方法で実現することになる。

当社は、AI機能ごとにクラウドのAIと自社運用のローカルLLMを切り替えられる構成をprojectAIで運用している。切り替えは約30秒で全体に反映され、システムを止める必要はない。利用規約や社内規程の都合でクラウドのAIを使えない機能があっても、同じ機能をローカルLLMで動かせる。構成と費用の考え方はローカルLLM構築・導入支援にまとめている。

改定で「使ってよい」と明記された範囲

禁止だけでなく、許可される用途も明文化された。監視・法執行の条項では、同意にもとづく追跡(不正検知など)、コンテンツ監視、報道、法務調査は許可と書かれた。選挙の条項では、政策調査や市民教育といった正当な活動が、ターゲティングの一律禁止の撤廃で明確に許可の側に入った。

業務システムで多い用途、たとえば問い合わせの分類、書類の読み取り、議事録の要約、翻訳、社内データの検索は、いずれも高リスク用途に当たらない。人に関わる判断を含まない限り、改定による追加要件はない。

当社がAI導入で確認している項目

当社はAIを組み込むとき、設計の最初に次の項目を確認している。今回の改定後も、この項目は変わらない。

  • 用途の分類。AIが扱うのは下書き・整理・分類か、人に関わる判断か。
  • 高リスク用途の判定。健康、法的権利、金融、生計、教育に関わるなら、人が確認して変更できる点を仕様に置く。
  • 本人への開示。消費者向けのチャットやアシスタントは、AIであることを示し、人につながる経路を用意する。
  • 停止手段。AIが止まったときに業務や機器がどうなるかを決める。通常処理への切り替え、または安全状態での停止。
  • 処理の場所。クラウドのAIかローカルLLMかを機能ごとに選び、対応地域と社内規程に合わせる。

この確認を含めた進め方はAI導入支援にまとめている。

よくあるご質問

この規約は日本の会社にも適用されますか?

適用される。Claudeを利用するすべての利用者が対象で、日本は対応地域に含まれる。海外親会社を持つ法人は、親会社の所在地による支配関係の判定を確認する必要がある。

社内だけで使うAIでも、本人への開示は必要ですか?

開示の要件は、影響を受ける個人に対するものだ。従業員の評価や採用の判断にAIを使うなら、社内利用でも対象になりうる。文書の要約や翻訳のように人の判断を含まない用途には、追加の要件はない。

すでに作ったAI機能はどうすればよいですか?

高リスク用途に当たるかを分類し、当たる場合は人が確認して変更できる点と開示の有無を確認する。機器につないでいる場合は停止手段を確認する。当社の実装では、人の承認と通常処理への切り替えを最初から組み込んでいるため、改定後に変更するものはない。

Claudeが使えない場合、同じ機能を別の方法で動かせますか?

動かせる。当社はAI機能ごとにクラウドのAIとローカルLLMを切り替えられる構成を運用しており、使えない機能だけをローカルLLMに移せる。

他社のAIサービスの規約も同じですか?

各社で異なる。この記事はAnthropicの規約を扱っている。複数のAIを使う場合は、それぞれの規約で高リスク用途と対応地域の扱いを確認する必要がある。

まとめ

11月12日の改定で、業務にAIを組み込む会社が確認するのは3つ。高リスク用途では人が確認し本人に開示すること、物理的に動く機器では人が止められること、対応地域の判定が支配関係まで及ぶことだ。

規約が求めているのは、AIが決めない設計と、止められる仕組みに尽きる。この二つを最初から組み込んでいれば、規約が変わっても設計は変わらない。AIの組み込みで迷う点があれば、無料の見積もり相談で担当PMに直接聞いてほしい。

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出典: Anthropic「2026 Usage Policy update」(2026年10月8日)、「Usage Policy」、「Supported Regions Policy」。いずれも2026年10月14日に確認。