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AIエージェント導入事例:問い合わせの営業メールを仕分け、人に届くのは3%に
会社サイトの問い合わせフォームに届くメールの大半は、営業です。人材紹介、SEOの提案、ツールの導入提案。本物の相談を見逃せないので、一通ずつ開いて読み、営業だと分かって閉じる。この確認に、代表の時間が毎日取られていました。
当社は2026年の夏から、届いた問い合わせをAIが「本物か、営業か」判定し、本物だけを代表に知らせる仕組みを自社サイトで動かしています。この記事は、そのAIエージェントの導入事例です。他社の事例を集めたまとめではなく、自社で作って定着した一件を、発端から仕組み、設計の判断、導入効果、中小企業での進め方まで書きます。

AIエージェントとは:チャットボットとの違い
AIエージェントは、決められた役割の中で、調べる、判断する、実行するといった複数の手順をAIが自分で進める仕組みです。質問に一回答えて終わるチャットボットや、聞かれたことに文章を返す生成AIと違い、業務のデータや道具につながり、結果を見て次の手順を選びます。
当社の問い合わせ対応のAIエージェントは、届いた文面を読んで判定し、代表に通知するか、用件を聞き返すか、記録だけ残すかを自分で選びます。役割は小さいですが、業務の流れの中で判断し、動く点はエージェントそのものです。
導入の発端:営業メールの確認に時間が取られていた
当社サイトの問い合わせフォームには、毎日送信があります。その中身は、人材紹介やエンジニアの紹介、SEOや集客の提案、ツールやシステムの導入提案、補助金の案内がほとんどです。
問題は件数そのものより、本物の相談を見逃せないことでした。開発の依頼、取材の依頼、求職者からの応募は、営業メールと同じフォームから同じ通知で届きます。だから一通ずつ開いて読むしかなく、営業と分かるまでに1件ずつ数分がかかっていました。通知を止めることもできず、通知の大半が営業という状態が続いていました。キーワードで弾く方法も考えましたが、営業メールは毎回言い回しが違い、本物の相談にも同じ言葉が出てきます。文面を読んで意図を判断する必要があり、それはAIに向いた仕事でした。
仕組み:問い合わせ対応のAIエージェントは判定だけを行い、返事は書かない
作ったのは、問い合わせの文面を読んで4つに分ける判定役です。判定は、当社のプロジェクト管理ツール「projectAI」のAI基盤で行い、サイト側はAIを直接呼びません。
- 本物。開発や相談の依頼、見積もりの依頼、取材や登壇の依頼、求職者本人からの応募。
- 営業。当社に何かを提供・提案・売り込みする連絡。人材紹介、SEOや広告の提案、ツールの導入提案、補助金の案内など。「人材をお探しですか」「貴社サイトを上位表示します」という連絡は、採用や相談に見えても営業と判定します。
- 迷惑メール。無意味な文字列、明らかなスパム、フィッシング。名前や本文がランダムな英字の羅列になっているボット送信は、AIを呼ばずにこの判定にします。
- 不明。挨拶だけ、用件が書かれていないなど、本物か営業か判断できないもの。
判定後の動きは、人が決めた固定の手順です。本物と不明は、代表に通知し、送信者には受け付けた旨を自動返信します。営業と迷惑メールは、記録に残すだけで通知も自動返信もしません。チャットでは不明のときにAIが用件を最大2回聞き直し、それでも分からなければ代表につなぎます。返答の文面はすべて人が書いたテンプレートで、AIが文章を書いて送ることはありません。
設計で最も気をつけたのは、本物を取りこぼさないことです。AIの判定が15秒以内に返らないとき、判定に失敗したとき、判定が不明のときは、すべて本物として扱って通知します。採用への応募は、AIに判定させず必ず人が確認します。判定には理由も一行で記録され、営業と判定された問い合わせも一覧に残るので、人が後から見直して対応中に戻せます。判定基準そのものも日本語の文章で書いてあり、判定の傾向が変わったときは、この文章を直すだけで済みます。
AIに渡す文面は、先頭の1,500字までに限定しています。判定に使うモデルは、クラウドのAI(Claude)と、自社サーバーで動くローカルLLMを、projectAIの設定画面で切り替えられます。どちらで動かしても、利用のたびに費用と結果が記録されます。
導入効果:人が読む問い合わせは、全体の3%に
直近約2か月半(2026年8月中旬から10月下旬)に届いた問い合わせの判定結果です。
| 判定 | 件数 | その後の扱い |
|---|---|---|
| 営業 | 85% | 記録のみ。通知なし |
| 迷惑メール | 12% | 記録のみ。通知なし |
| 不明 | 1% | 代表に通知 |
| 判定なし(時間切れ) | 2% | 本物として通知 |
全体の97%は営業か迷惑メールで、人が開かずに済みました。代表に届いたのは3%です。問い合わせフォームの送信の8〜9割が営業やスパムだという話は珍しくなく、当社の割合もその範囲でした。この期間、フォームから本物と判定された相談はありませんでした。本物の相談は、無料見積相談やチャットなど別の入口から届いています。
通知の数も同じ割合で減りました。1件ごとの確認は数分でも、毎日、通知が鳴るたびに仕事を中断していた時間です。通知が鳴れば本物の可能性が高い状態になったことが、割合以上の変化でした。
判定の誤りは、この期間には見つかっていません。判定が時間切れになった2%は、本物として通知される側に倒れたので、取りこぼしにはなっていません。
定着した理由:AIエージェント導入のポイント
この仕組みが1日で止まらずに動き続けているのは、作り方に理由があります。
- 業務の流れの中に置いた。フォームとチャットの送信直後に判定が走り、人は結果だけを受け取ります。誰かがAIの画面を開いて貼り付ける手順はありません。
- 任せる範囲を判定だけに絞った。AIは4つの分類と理由を返すだけで、返事の文面は書きません。誤りが出ても、送信者に届くのは人が書いたテンプレートです。
- 迷ったら人に倒した。不明、時間切れ、失敗はすべて通知側です。AIを信じすぎない設計にしたことで、安心して通知を減らせました。
- 記録を残した。判定と理由が一覧に残り、営業と判定された問い合わせも後から見直せます。利用ごとの費用も記録されます。
- データの置き場所を決めた。判定は自社のAI基盤で行い、必要ならローカルLLMに切り替えられます。渡す文面も1,500字までです。
当社のほかのAI活用も、同じ考え方で作っています。基幹システムに話しかけて在庫を調べるアシスタント、通帳や現場写真の読み取りと仕分け、志望理由書の採点、変更依頼を実装するAIエージェント「Mr.AI」。AIエージェント・生成AIの導入事例一覧にまとめています。
中小企業がAIエージェントを導入する進め方
問い合わせの自動振り分けは、中小企業がAIエージェントを業務に組み込む最初の一歩に向いています。手間がかかっていて、正解を確かめやすく、間違えたときの逃げ道を作りやすいからです。進め方は4つです。
- 本物の定義を言葉にする。どの連絡を人が読むべきかを、例とともに書き出します。判定の基準はこの文章がそのまま使えます。
- 迷ったら人に倒す。不明と失敗は通知側に置き、AIが黙って捨てる経路を作りません。
- 返事は人が書く。自動返信や断りの文面はテンプレートにし、AIには判定だけを任せます。
- 数字を記録する。判定の内訳と費用を残し、月に一度見直します。
メールの受信箱、問い合わせフォーム、チャットのどれにも同じ形で組み込めます。既存の業務システムに後から追加することもできます。当社のサイトでも、チャットの判定を先に動かし、1か月後にフォームへ広げました。
よくあるご質問
AIエージェントと生成AI、RPA、チャットボットは何が違いますか?
生成AIは文章や画像を作り、RPAは決められた手順を繰り返し、チャットボットは質問に答えます。AIエージェントは役割の中で判断し、次の手順を自分で選んで進めます。この事例では、判定して通知するか聞き返すかを選ぶ部分がそれにあたります。
本物の問い合わせをAIが誤って捨てることはありませんか?
AIが捨てる経路はありません。営業と判定された問い合わせも記録に残り、人が後から見直せます。不明、時間切れ、失敗は本物として通知されます。
営業の方に失礼になりませんか?
営業と判定された連絡には自動返信を送らず、記録に残すだけです。チャットでは、個別の提案は受けていないことと、開発の依頼はフォームからお送りいただきたいことを、人が書いた文面でお伝えしています。
問い合わせの文面をAIに渡して安全ですか?
判定は自社のAI基盤で行い、先頭の1,500字だけを渡します。社外にデータを出したくない場合は、自社サーバーで動くローカルLLMに切り替えられます。
費用はどのくらいかかりますか?
判定は1件あたり短い文章を1回読むだけなので、AIの利用料はごくわずかです。開発費は、組み込む入口の数と通知の仕組みで変わるため、無料見積相談で業務の内容をうかがってからお伝えしています。
中小企業でも導入できますか?期間はどのくらいですか?
できます。当社でもチャットの判定を先に動かし、1か月後にフォームへ広げました。入口を一つに絞れば、判定基準を言葉にするところから本番で動かすまで、数週間が目安です。
自社の受信箱にも使えますか?
使えます。フォームやチャットと同じように、届いたメールを判定して、本物だけを担当者に知らせる形にできます。判定の基準は貴社の業務に合わせて言葉にします。
まとめ
AIエージェントの導入事例として、問い合わせの仕分けを任せた結果、人が読むのは全体の3%になりました。効いたのは、AIに判定だけを任せ、迷ったら人に倒し、記録を残すという設計です。大きな仕組みではなく、毎日の小さな中断をなくす一件から、AIの活用は定着します。
当社は、任せる場面の整理から試験導入、業務システムへの組み込み、運用までを担当します(AI導入支援)。「自社のどの業務から始めればよいか」という段階でも、無料見積相談で担当PMにお話しください。お問い合わせからも受け付けています。
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この記事の監修者

永田 一郎代表取締役
ヤフー(Yahoo! JAPAN)のエンジニア出身。スタートアップ、大手事業会社にて18年以上にわたり、toC/toB向けの新規事業開発、業務DX化など、多種多様なプロジェクトに従事。エンジニアとして自ら開発に携わる一方、体制構築やマネジメント、事業設計、仮説検証にも関わり、事業の立ち上げとグロースを幅広く体得。これまでに三回の事業売却を経験。共創でより効果的にプロダクトをつくり、アイディアをマーケットで検証できることを確信し、共創プラットフォームを提供するため wesionaryTEAM を創業。