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AI時代におけるシステム開発会社の志 ― 速くつくれること自体は、価値ではない

AIを使えば、システムはすぐに形になります。画面の案を出し、プログラムを書き、テストまで進める。当社も、日々の開発でAIエージェントにその多くを任せています。

それでも、当社は「速くつくれること」を売りにしていません。速さは、どの会社にも手に入る前提になりつつあります。差がつくのは、何をつくらないか、画面が使えるか、安全か、誰が責任を持つか、という判断の側です。

この記事では、その考えを、2026年11月時点の公開調査と当社の進め方で説明します。AIに全部任せたときに何が起きるかも、数字で書きます。

速くつくれること自体は価値ではない ― 見る、削る、画面を考える、確かめて直すという人の工程が差になり、AIがつくる工程は差にならない

この記事を書いた人

wesionaryTEAM 編集チーム

株式会社wesionaryTEAMのプロジェクトマネージャーとエンジニアで構成する編集チームです。業務システム開発、AI導入支援、DX推進の案件で日々得ている知見をもとに、検討中の方が判断に使える情報を、事例と数字を添えてお届けします。

速さは、発注者の成果にそのまま残らない

書く速さが上がったことは確かです。ただ、それがプロジェクト全体の速さになるとは限りません。

Bainの2025年の報告書では、AIアシスタントを使うチームの生産性向上は10〜15%でした。そもそもコードを書いてテストする工程は、着想から出荷までの時間の25〜35%ほどです。残りは、何をつくるかを決め、確かめ、直す時間です。

体感も当てになりません。経験豊富な開発者16人の課題246件を使った2025年の無作為化試験(METR)では、AIを使うと19%遅くなったのに、本人たちは20%速くなったと信じていました。当時のツールでの結果で、METRは2026年2月の続報で、いまは開発者がより速くなっている可能性が高いとしています。それでも、体感と実測がこれだけずれるなら、速さの数字は鵜呑みにできません。

書いた後の負担もあります。Stack Overflowの2025年の調査で、AIへの不満の1位は「ほぼ正しいが完全ではない回答」で66%、2位は「AIが書いたコードのデバッグに時間がかかる」で45%でした。DORAの2025年の報告書も、AIの採用は開発の処理量を増やす一方で、デリバリーの安定性とは負の関係が続いているとし、AIはチームを直すのではなく、すでにあるものを増幅すると結論づけています。

「動く」と「安全」は別のこと

AIが書いたコードは、たいてい動きます。問題は、動くことと安全なことが別だという点です。

脆弱性が入りやすい課題をAIに解かせて静的解析にかける継続調査(Veracode)では、2025年7月に100以上のモデルで45%、2026年10月に18モデルで38%のケースに脆弱性が入りました。最も良いモデルでも合格率は73%です。

AIに任せて作られ公開されたアプリを調べた2026年の論文では、監査した200本の91.0%に脆弱性が1件以上あり、見つかった脆弱性の65.77%が重大度CriticalまたはHighでした。集中していたのは、権限の不備、インジェクション、認証の不備です。

事故も同じ場所で起きています。2025年5月には、AIでアプリを作るサービスのサイトに載っていた1,645本のうち170本で、誰でも利用者の情報を読める状態だったと、別のAIツール会社の社員の調査をもとに報じられました。同じ年の7月には、AIエージェントが変更を止めていた期間に本番データベースのデータを削除したと報じられました。どちらも、欠けていたのはコードではなく、「誰が何を見てよいか」「本番で何をしてはいけないか」という判断です。

OWASPは2025年版Top 10の選外候補に「AI生成コードへの不適切な信頼」を挙げました。提出するコードは読んで理解できなければならないとし、業務上重要なプログラムや長く使うプログラムに、人の監督なしでAIに書かせる進め方(バイブコーディング)は推奨しないとしています。

この記事の冒頭の画像は、その状態を一枚にした架空の画面です。誰でも見られる公開設定、省略された認証、画面に出たままの鍵、本番でのデバッグモード。こうした不備はAIでなくても起こりますが、全部を任せると、疑う人がいなくなります。

日本でも、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」は組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」を初めて選びました。個人情報保護委員会は2026年10月の注意喚起で、URLや会員IDの書き換えで他人のデータが見られる、IDが連番、アクセス回数の制限がない、という事例を挙げています。先ほどの論文で多かった権限の不備と同じ種類です。

一方で、国内でAIが書いたコードが原因と公表された事故は、当社が調べた範囲では2026年11月時点で見つかっていません。公表されているのは、人が個人情報を外部のAIに入れた側の事故で、2026年10月には約33万4000人分の例がありました。

つくらない機能を決める

機能は、増やすほど使いにくくなり、壊れやすくなり、保守が重くなります。それでも要望は積み上がり、AIは頼めば何でも形にするので、「つくらない」判断はいっそう置き去りになります。

その判断の重さは数字にも出ています。Pendoが615契約の利用データを分析した2019年の報告では、機能の80%はほとんど、またはまったく使われず、12%の機能が日々の利用の80%を占めていました。Microsoftの実験でも、指標の改善を狙った施策のうち成功したのは約3分の1です。

Figmaの2026年の報告書は、この状況を一文で表しています。「AIはほぼ何でも作れる。できないのは、何を作る価値があるかを決めることだ」。削る判断は、人が持たなければなりません。

使いやすい画面は、人が決める

AIに画面の案を頼むと、整った案がすぐに出ます。当社も案出しには使います。ただし、そのまま使うことはありません。

銀行アプリのトップ画面をAIに生成させた2025年の研究では、アクセシビリティ(誰でも使えること)を専門家2人が10項目で評価すると、違反のある画面の割合は平均58%でした。指示に条件を書き込むと平均19%まで下がりますが、ゼロにはなりません。指示を書くのも、残りを直すのも人の仕事です。

AIが出すのは、一般的な業務に対する一般的な画面です。使う人がどの順番で何を見て、どこで迷うかは、現場でしか分かりません。使う人と一緒に触って、順番を入れ替え、要らない項目を消して、はじめて使える画面になります。

責任は、作り方では移らない

AIが書いたからといって、開発会社の責任は消えません。請負契約では、納品物が契約の内容に合っていなければ、開発会社が契約不適合責任を負います。準委任契約では、報酬の対象が作業なら原則として契約不適合責任はなく善管注意義務を負いますが、成果物の完成を約束する形も多くあります。だから、契約の形と検収の基準を、作り始める前に決めておくことが大切です。

著作権には注意が要ります。文化審議会の「AIと著作権に関する考え方について」は、AIへの指示がアイデアにとどまる場合、生成物に著作物性は認められないと整理しています。譲渡できる著作権がないこともあるので、「著作権は発注者に帰属する」という条項だけでなく、利用と改変の許諾とソースコードの引き渡しまで契約に書いておくと確実です。

国の指針も、判断を人に置いています。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月)は、自動化バイアスなどAIに過度に依存するリスクへの対策を求め、注記で、AIの判断を承認するときは理由や根拠を自分で考えてからにすべきだという提案を紹介しています。

浮いた時間を、何に使い直すのか

時間の使い道の変化 ― これまでとこれから

これまでの開発は、時間の大半を実装とテストに使っていました。当社は、AIで浮いた時間を工期の短縮ではなく、画面を先に考え、使う人と触って直し、つくらない機能を決めることに使い直しています。

当社の実際の進め方

考え方だけでは精神論になります。実際には、毎週こう動いています。

当社の実際の進め方 ― 見る、削る、画面を考える、つくる、直す

最初に、使う人の仕事の流れを現場で見ます。次に、要望の一覧から「なくても困らない機能」をつくる前に外します。画面は案を複数つくり、使う人と一緒に触って選びます。ここまでが人の仕事です。

実装とテストはAIエージェントが進めますが、変更は当社の開発者がレビューしてから取り込みます。秘密情報の混入検査とライブラリの脆弱性監査は必須のチェックにし、本番データの削除や権限の変更は人が確認してから実行します(当社のルール)。

要望、仕様、進み具合、確認、承認は管理ツールにまとめ、お客様は専用の画面からいつでも確かめられます。毎週、動くものをお客様に見せて、使ってもらい、直します。

開発会社に確認するとよい点

国土交通省の関東地方整備局は、受注者の生成AI利用を確かめるチェックリストを公開しています。その項目に、当社が大事にしている点を足すと、次の7つです。

  • つくらない機能を提案してくるか。全部つくるだけでは、使いにくいものになりがちです。
  • 画面を、実際に使う人と確かめているか。
  • AIが書いたコードのレビュー体制が、形式でなく実際に動いているか。
  • どのAIサービスを使い、入力が学習に使われない根拠を示せるか。
  • 誰が何を見てよいか(認可)と鍵の扱いを、どう確かめるか説明できるか。
  • 検収の基準と契約の形を、作り始める前に書面で決めるか。
  • ソースコードの引き渡しと、利用と改変の許諾を契約に書けるか。

よくあるご質問

AIを使うなら、費用も工期も下がるのではありませんか?

書く時間は下がります。ただ、書いてテストする工程は全体の25〜35%ほどで、判断と確認の時間は残ります。当社はその時間を、見極めと画面と安全性に使います。

速くつくってほしい案件は受けてもらえますか?

はい。その場合も、つくらない機能を一緒に決めるところから始めます。それが結局、いちばん速いからです。

AIに全部任せてつくった画面を、そのまま使ってはいけませんか?

社内で使い捨てる道具なら構いません。お客様のデータを預かるものや長く使うものは、権限と鍵を人が確かめてからにしてください。

まとめ

AIによって、動くものを速くつくることは前提になりました。価値は、本当に必要な機能を見極めること、使える画面を使う人と考え抜くこと、安全を確かめること、その責任を引き受けることに移っています。当社は、AIが生んだ時間をそこに使い直す開発会社でありたいと考えています。

何を削るか、どこまでAIに任せるかから一緒に決めたい方は、無料の見積相談からご連絡ください。

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出典

この記事の監修者

永田 一郎代表取締役

ヤフー(Yahoo! JAPAN)のエンジニア出身。スタートアップ、大手事業会社にて18年以上にわたり、toC/toB向けの新規事業開発、業務DX化など、多種多様なプロジェクトに従事。エンジニアとして自ら開発に携わる一方、体制構築やマネジメント、事業設計、仮説検証にも関わり、事業の立ち上げとグロースを幅広く体得。これまでに三回の事業売却を経験。共創でより効果的にプロダクトをつくり、アイディアをマーケットで検証できることを確信し、共創プラットフォームを提供するため wesionaryTEAM を創業。